2013/07/05

ゴールデンチャイナタウン/Berryz工房


バブリーチャイナタウンポップス


キャリアが10年を越えたハロプロのアイドル・グループBerryz工房のニュー・シングル『ゴールデン チャイナタウン』。そのタイトル通りの中国っぽいメロディーがアクセントになったポップス。

"チャイナタウン"と名を冠する曲は日本の歌謡曲/J-POPに連綿と続いている。その中身はそれぞれだけれども、この曲は「高層階から眺める夜空/星がきれいね  starlight」「甘い甘いチャイナタウン 金貨のプールで泳げば煌めく tonight」といった記号的なまでにバブリーな歌詞が全編に渡って展開していてチャイナタウンというかむしろ上海あたりのチャイナそのもの。景気のよさでは過去類をみないのではないかと。

チャイナと「〜しちゃいな」をかけるクリシェが控えめに何度か用いられているものの、全体としては遊びの少ない歌詞。それを数フレーズごとにシンプルに受け渡して歌う。曲はAメロと変則Aメロが繰り返されてサビ間奏という王道な作りで、イントロ間奏だけ拍子が変化するものの全体としては一貫した雰囲気で、5分半の曲としては淡白な印象。

つんくプロデュースの曲はこれに限らず、その時々の今っぽさからずれていることが特徴だとは思うけれども、この曲に関しては新鮮味のない場所へずれて、こじんまりとしてしまっていて、プラスに働いていない。他のユニットともどももっとはっちゃけるのを期待。


見栄っ張りなUED(歌モノ・エスノ・ディスコ)  


自身が本来得意としていたタイプの音楽を下地に、EDM以降のプロダクションを融合するというのが、ここ最近のつんくのモード。ざっくり言えば、ハロプロの本隊とも言えるモーニング娘。はそのベースにいわゆる歌謡曲が選ばれ、副隊であるBerryz工房の場合はちょいエスノなディスコ・ファンクがベースになっている。

もちろんどちらのグループも、歌モノであることに変わりはないが、それでも両者の差異は結構はっきりしている。前者の場合、あくまで楽曲の中心に歌と言葉にある。その結果、最新のシングルの「ブレインストーミング」のように、構造的にかなり入り組んだフリーキーな仕上がりになることも少なくない。それと比較すると、本作はEDMのスタイルを取り入れながらも、オリジナルのディスコ・ミュージックに寄っていて構造的にもシンプルだ。

そうしたトラックの上に乗っかるのは、意味やストーリーを語るのではなく、気だるく金満っぽいムードを醸し出す役割を果たすリリック。ゴールデンチャイナタウンという言葉がそのままタイトルになったもの、何らかのメッセージというよりは、その挑戦的な意味合いと、何よりも音の響きが気に入ったのだろう。

その結果浮かび上がってくるのは、ゴージャスで刹那的なポップスの意地というか、語弊を招く事を覚悟で言えば、見栄みたいなものだ。外国のやつらに負けてられへん!バチンとかましたる!そんな心意気も感じる。となると、(あまりのカットアップ感ゆえに半ばサイケデリックな領域まで踏み込みがちな)本隊との差別化のためにも、もっとオーセンティックな情念、ソウルを歌っても良い気がする。