「わたし、彼のこと好きかも」の後に来る壮絶なもの
*与えられた愛に報いようとした時、愛は「見返りを求めない無償のもの」から「応酬するもの」に変わる。
そして本作がエモーショナルなのは、その変化の瞬間を捉えているからだ。
ありきたりな「幼なじみパターン」の恋愛物語のヒロインが、彼に向けて告白の手紙を書いている。二人の思い出を振り返りながら「(ぶっきらぼうだけど)実は誰よりも私を助けてくれてたパターン」の愛を感じ、自らの気持ちもそれに寄せて行く。オルゴールを模したと思われるエレピを中心としたアンサンブルと角の丸いサウンドが、彼女のノスタルジックで穏やかな感情を充満させていく。
その空気が変わるのは、2回目のコーラスが終わってから一度だけ登場するブリッジ。
私たちのケーキに/イチゴはいくつ?
数えながら分け合って/一緒に暮らそうよ
数えながら分け合って/一緒に暮らそうよ
もしあなたが落ち込んでいる時は/私のイチゴもあげる
涙も分け合おう
涙も分け合おう
息を呑む。
一つは、生暖かいノスタルジアが充満していた空間に「与えられた愛へ報いることへの決意」がサッと煌めいた、その眩しさへの単純な感動によって。
もう一つは、(矛盾するようだが)ヴェールに包まれた刃物を突きつけられたような、ヒヤリとする感覚によって。
*(繰り返し)
多くの元カップルが証明するように、そのバランスを保つことは簡単ではない。そして、与えた愛が報われないと分かったとき、人は深く傷ついたりもする。だから愛の約束は実はとても恐ろしい。と同時に、その恐怖や困難と向き合う勇敢さを試されるゆえに、愛の約束はとても美しい。
穏やかな感情とありきたりなプロットの中でも(だからこそ)愛はちゃんと煌めいている。光っているからといって善いものだとは限らないのだけど、傷つくのを恐れたら人は愛せない。どんどん傷つこう!
(フル尺のPVは無し。。。)