2013/10/11

E-girls / ごめんなさいのKissing You




E-Girlsの本領を発揮する作品


EXILEの妹分(というか事務所の後輩)としてデビューしたガールズグループ、E-Girls。二十代後半から十代前半まで幅広い年代のメンバーが所属し、アメリカン・ハイスクールのチアリーダーみたいなスポーティなパフォーマンスが特徴のグループだ。これまでも、4枚目のシングル「NEVER ENDING STORY」でオリコン2位を獲得するなど、長くないキャリアに対して十分な成功を収めて来た(ように見える)が、一方で、グループ最大のアピールでもあったその「NEVER〜」がカバー曲だったことも災いして、EXILEの妹分というキャッチフレーズ以上のインパクトを持てないまま、ここまで来ていたという印象も少なからずあった。要するに、どこかパッとしなかった。だが、そんな時期にもいよいよ終わりを告げることになるだろう。本作「ごめんなさいのKissing You」は、彼女たちの一般的なイメージを確立する作品となるはずだ。

テンポが早く、なおかつ裏を強調した軽めのリズムと、スカスカのプロダクションが特徴のこのエレポップで描かれているのは、男友達との食事を浮気と疑われ必死に謝っている女子の心境。シチュエーションだけ聞くと、いわゆる“修羅場”みたいなものを想像するかも知れないけど、それよりは全然かわいいヤツ。逆に言えば、まだまだ「謝れば済む」段階の話だ。チアリーダーめいた賑やかなメロディや、テンポのいいアレンジの展開(途中ダブステップ的なアレンジも登場するが、あくまで曲中の1バリエーションとして、いかめしくなり過ぎて曲の持つヴァイヴを壊さないよう制御されている)などが強調するように、むしろこの曲の中心にあるのは、フワフワと能天気な恋の楽しさの方だろう。サビの後半で、しなっとデレてみせるところの展開も良い。

恋だ愛だと言えば、ふたこと目には「命を掛けて」とか「一生あなたを」みたいな重い言葉が出てくるラブ・ソングに比べて、こういうカジュアルな恋愛ソング(シチュエーションにもひと工夫あるし)が際立って来るのはとても健康的な気がする。

それにしても、こないだのEXILEもそうだけど、LHDって、目新しさは全くないものの、クオリティの高い曲を出してくる印象。母体がavexだからかな? 恥ずかしながら今回まで知らなったんだけど、作曲のCLARABELLは、ビースティーズ絡みのイベントをきっかけにデビューした作家のようで、他の仕事も掘り下げてみたい(あと、余談だけど、ヴィデオは全然Shortじゃなし、アレンジも音源とかなり変わってるので注意!)


(佐藤 優太)

2013/10/04

EXILE / No Limit





EDMの導入が浮き彫りにする、グループの積み上げたもの


自分を信じて挑戦し続ける限り、成長に限界なんてない。というビジネスマンの題目的なメッセージを、EXILEらしい哀愁漂うメロディに乗せて歌うEDM歌謡曲。自信というか度胸というか、そういう威勢の良さがみなぎっているところは勿論、<この体が消えるまで>なんて虚無をちらつかせるところまで含めて、成功者らしいテーマを持った音楽だ。

作曲には4人の名前がクレジットされている。メジャーかアンダーグラウンドかを問わず、数多くのラッパー・歌手のトラックを手がけるビートメイカー BACHLOGIC、R&B系アーティストへの曲提供の多いFAST LANE、そして、安室奈美恵の「Go Round」など今でいうEDMタイプの作品を多く手がけるTesung Kim&ANDREW Choi。一般的にも、EXILEの楽曲にはハウスやバラードのイメージが強いが、「Each Other's Way 〜旅の途中〜」や「24karats STAY GOLD」などBACHLOGICが手がけた曲には比較的ヒップホップ寄りのものが多かっただけに、ブレイクを多用した4つ打ちをベースにした本作を聴いた時、最初はちょっと違和感があった。全然ヒップホップ関係ないけど?と。

で、前述の4名の仕事ぶり手がかりに予想した制作行程は以下の通り。①まずATSUSHIが詞を書き(TAKAHIROのインタビューを読む限り詞先の可能性が高い)②それを元にFAST LANEがメロディを下書きした上で、③Tesung Kim&ANDREW Choiが曲のウワモノのアレンジや全体の構成をまとめて、④BACHLOGICがビートを打ち込んで行った。そう考えると、音色といいフィルのアレンジといい、今作のビートにはアナログっぽい手触りが感じられる(ような気がする)。余談だけど、「EDMっぽいウワモノとヒップホップのビートの組み合わせ」というアイデアは、今年出たKREVAのアルバム『Space』でも採用されていた。

まあファンの95%はそんなこと気にしてないだろうけど、こんな風にあれこれ考えちゃうのも、EDMの粗暴さに全く回収されないヴォーカル2人の歌があってのことだということは絶対記しておきたい。普通この手の曲だと、ヴォーカルが大味なメロディになったり、やたらとエフェクトを掛けたりして、トラックになじませようとするものなんだけど、この曲にはそうした配慮はほとんどない。もっと簡単に言えば、この音楽性に対して歌がうま過ぎるのだ。終盤になって多声コーラスが入って来るのとか…思わず笑っちゃうけど冷静に考えるとかなり変わった展開なんじゃなかろうか。

そもそもEXILEというグループ自体、80-90年代のブラック・コンテンポラリーの系譜に連なるグループとして、ダンス・チューンでありながらしっとりとした歌を聴かせるという、一見矛盾しそうな2面を両立し続けて来たグループだけに、たとえアレンジがEDM側に振れても自分たちの芯はブレさせない。という気合い?業?のようなものが感じられて、センパイさすがっす!みたいな気分になってしまう。やっぱ一朝一夕に積み上げたものじゃないんだよ。

(佐藤 優太)